重症化予防プログラム導入のメリット
医療保険者の方へ〜増え続ける慢性疾患患者の医療費〜
生活習慣の変化、高齢化、医療の高度化により、慢性疾患患者の占める割合が増加し、それが医療費増加の要因になっていると指摘されています。
医療保険者の医療費の支出をみると、以下のように、慢性疾患の治療が医療費を大きく押し上げる構造になっていることがわかります。
しかし、これを詳細に分析すると、重症化している数パーセントの方の医療費が大きな割合を占めているという結果でもあります。
たとえば、A医療保険者の糖尿病に関連した分析結果をみると、糖尿病の初期の治療費は1人あたり年間5万円から30万円程度ですが、腎不全を合併して透析治療にまで移行してしまうと1人あたり年間500万円以上になります。
血液透析になると、週3回、1回4~5時間もの透析を日常生活の中に取り入れなくてはならなくなり、また、ほぼ同時に糖尿病網膜症(重症化すると失明)や末梢神経障害(重症化すると下肢切断)を併発することも多く、就業継続も困難になります。
腹膜透析を行っても、個人差はあるものの数年で腹膜の劣化が起こり、血液透析に移行することになります。
あわせて身体障害者手帳の交付対象となり、人によっては各種税金等の控除や障害者年金(月10万円程度)の交付も発生します。
つまり、透析を行っている方お一人に対して、数百万円/年の公費支出が必要となってきます。
そして、何よりも、本人や家族の自尊感情が低下し、思うように活動もできなくなることからQOLが低下します。
これは、本人・家族・会社・社会全体にとっても大きな損失となります。
他の慢性疾患も同様
これは、糖尿病腎症に限りません。以下に、おおよその医療費を列挙します。
主な疾患で必要な入院期間と医療費
2009年1月~3月
傷病名 |
入院日数 |
1人当たり1回入院医療費 |
胃の悪性新生物 |
20.2日 |
839,850円 |
急性心筋梗塞 |
17.2日 |
1,950,210円 |
狭心症 |
5.4日 |
902,170円 |
脳梗塞(再発率 約年5%) |
35.5日 |
1,122,150円 |
脳出血 |
46.2日 |
1,775,620円 |
糖尿病(教育入院) |
16.5日 |
418,910円 |
喘息 |
8.0日 |
268,480円 |
https://www.ajha.or.jp/hms/outcome/bunseki_7_2009_01_03.html
(社)日本病院協会の調査(2000年~2001年)をみると、心臓カテーテル治療入院1回で平均207万6700円、心臓バイパス手術入院1回で平均459万3600円かかっています。
残念ながら、日常生活を適切にコントロールしないと再狭窄を何度も起こし、このカテーテル治療を繰り返すことになります。実際、多い方で、一生の間に5回も6回も治療を受ける方もおられます。
近年、増加傾向にある脳梗塞も同様で、いったん発症してしまうと、高い割合で要介護状態となり、リハビリテーションとともに、多くの医療費や介護費用を必要とします。また、再発率も年間5~10%といわれ、数年で半数の方が再発するといわれています。血管が詰まる病気なので、脳梗塞を起こした人の多くは心筋梗塞も引き起こしています。
喫煙を主原因とするCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の方は、生涯にわたる酸素療法が必要となり(在宅酸素料は1人あたり月10万円程度)、冬季になると上気道感染を引き起こしやすく肺炎に移行することも多いことから、1冬の間に多い人では複数回の入退院を繰り返すことになります。有病率は、現在、日本では500万人以上と推計され、今後、団塊の世代の高齢化により倍増、死亡原因は第4位に上昇すると考えられています。
これらの悪化は予防可能
重症化すると高度な医療を必要とするこれらの疾患群の多くは血管系の病気で、高血圧、糖尿病、脂質異常が基礎にあり、これらが相乗して疾患を引き起こしています。つまり、高血圧、糖尿病、脂質異常を適切にコントロールすれば重症化を予防することができるのです。
糖尿病腎症においても同様です。これも細い血管の障害から起こりますので、厳格な血圧と血糖のコントロールが必要となります。
以下に示すのは、心不全の患者の症状が悪化し、再入院してくる原因の調査結果です。
自宅で塩分制限、水分制限が守れないことによって悪化し、再入院を繰り返していることがわかります。
知識が不足するまま、退院後に塩分の多い食品、漬物や練り物を食べる、味噌汁を飲むなどの食生活を続けることが再入院につながっています。
心不全増悪による再入院の誘因
塩分・水分制限の不徹底 |
33% |
感染症 |
20% |
過労 |
12% |
治療服用の不徹底 |
11% |
不整脈 |
11% |
身体的・精神的ストレス |
5% |
教育の重要性と医療費適正の効果
予防方法はわかっていても、長く身に付けた生活習慣はなかなか変えられません。また、変えるためには、正しい知識が必要です。そのために、私たちDPPヘルスパートナーズはあります。
じっくりと、その方の理解のスピードと関心にあわせて、ゆっくりと時間をかけて、そして長期間にわたって、専門家が生活習慣の変容をサポートしていきます。
重症化を防ぎ合併症を引き起こさないように予防すること、これによって透析への移行や集中治療、入院治療を予防することができるようになり、結果的に医療費の適正化につながります。